社会に出て、15年が経ちました。幸運なことに、これまで面白く、自分の能力を開発できる仕事をさせていただきました。それ故、転職しても働く業界が変わっても給与は右肩上がり。働く環境も最高です。
不思議なことに、同じくらいの能力があっても、チャンスを掴んで自分のやりたい仕事をできる人と、なぜかくすぶっている人がいます。ちょうど、私の身近にいた2人の女性がちょうどそんな感じ。ひとりはやりたい仕事をして、もうひとりはため息をしながら仕事をしています。彼女たちの違いは「やりたいこと」を周りの人にきちんと伝えたかどうか、でした。
私の職場の2人の派遣社員さん
私の職場には、何人かの派遣社員がいます。その中でひときわ能力が高い2人の女性がいました。分野は違えど、2人は私達のチームでなくてはならない存在です。
デザイナーのAさんは、IT分野の知見はまだまだなものの、今では貴重な紙でのデザイン経験が豊富。仕事が早く、提案力も高いので、依頼者が迷っていると、手を動かして数パターンのデザインを作って、依頼者を満足させてくれます。
事務員のBさんは、ドラマ『ハケンの品格』を彷彿とさせるようなちょっと変わり者ですが、とにかく仕事が早い。事務作業をてきぱきとこなし、手が開けば仕事をもらう働き者。派遣の仕事はここまで…というラインがしっかりとあるので社員から無理難題を言われると、きっぱり断ることができて、社員もタジタジって感じです。
ステップアップしていくデザイナーAさんの場合
デザイナーAさんと働き始めてから気がついたことは、彼女のコミュニケーション能力の高さでした。「天才的なデザイン能力!」よりも、私達のチームが求めていたのは、依頼者の意図を汲み取って、より良い提案とアウトプットができるデザイナー。まさにAさんは、渡りに船な人材でした。
私のチームですぐに力を発揮し始めてくれた彼女は、チームを超えて、別の部署の人とも趣味を通して交流するほどのコミュ力を発揮し、あっという間に会社に馴染みました。
週に1度の1on1で、私がAさんと話していた何気ない言葉を今でも覚えています。
私「チームのUIデザイナーが移動になっちゃって、しばらくそのポジションが不在で、開発に滞りがでそうなんですよね〜」
Aさん「業務経験はないですが、UIも興味があって勉強中なので、手伝えることがあれば言ってくださいね」
私「通常業務だけでも忙しいのに…。とてもありがたいです!」
Aさん「いえいえ。これからの時代、UIデザインができたら強いですからね。私も勉強になります」
その時は、開発が一旦停止になったので、AさんにUIデザインを頼むことはありませんでした。でも彼女の挑戦したいことは、しっかりと私の頭にインプットされたのです。
3ヶ月後、私は上司から相談があると呼び出されました。
上司「開発が急に走り出したんだけど、UIデザイナーがまだ採用できてないんだ。エンジニアが対応するにも限界があるから、外注しようと思うんだけど、いいUIデザイナー知らない?」
私「今回の開発は、そこまで大規模じゃないですよね?外注するにも、内部のことがあまりわかってない状態でパーツごとに出すのはかなり難易度高いですね…。あ!じゃあデザイナーAさんにやってもらうのはどうでしょう」
上司「彼女、UIデザインできたっけ?」
私「経験はないけど、勉強中って言ってました。趣味で知り合いのアプリのUIやってるらしいです」
ここからは、トントン拍子に、彼女はUIデザイナーの第一歩を踏み出すことになるのです。仕事をしている人にはわかると思いますが、新しい第一歩を踏み出す時には教育コストが多くかかるので、なかなかチャンスを掴むことができないものです。だれだって、こなれた経験者にお願いしたいもの。その中で、自分のスキルアップが見込める新たな仕事を手に入れたAさんの勝因は、紛れもなく「誰かにやりたいことを伝えた」ことです。もし私の頭の中に、AさんがUIデザインの勉強をしていることが入っていなかったら、その仕事は外注先に流れていたのです。
上司に振り回される事務員Bさんの場合
事務員のBさんは、きっちり時間内に働く派遣の鏡的存在。仕事は正確で思慮深く、リスクヘッジが得意です。どちらかというと人見知りで、自分から話しかけたりするタイプではないので、チームに馴染むのには少し時間がかかりましたが、きっちりとした正確性からチームメイトからの信頼が厚い仕事ぶりです。
彼女の能力の高さは、とても高く評価していたので、今の実務作業から管理業務にステップアップしてほしいなと思っていた私。週に1度の1on1でそれとなく聞いてみました。
私「Bさんは、このチームでやりたいことはありますか?」
Bさん「私は派遣なので、みなさんからやってって言われたことをやります」
私「特にやりたいことはないですか?」
Bさん「うーん…」
私「では、やりたくないことは?」
Bさん「…higeさんがこのチームをまとめてくれる前にいらっしゃった方は、改善を提案しても反映してくれず、無駄な手間や無理難題が多くて、説明しても理解できませんでした。higeさんに変わってから、それが大きく変わったので現状に満足しています」
私「なるほど。でも上司は選べないから、担当がまた変わる可能性もありますよ」
Bさん「…では、希望はhigeさんがずっとこのチームを取りまとめてくれることです」
私「私がこのチームをとりまとめることになったとき、Bさんは私に色々な提言をしてくれました。それによって、より効率的で安全な運用が実現できるようになったこと、とても感謝していますし、それはBさんの力だと思います。もしBさんが望むなら、この管理者の立場を目指すこともできると思います。そう言った希望は?」
Bさん「ないです。自分ではやりたいと思っていません」
私には、わかりましたというほかありません。彼女は効率的に仕事を進めたいという希望はあります。でも、それは上司によって大きく左右されます。チームの方針を決めるのはリーダーだからです。ほどなく、私はそのチームを離れて、新しいプロジェクトへ。Bさんから連絡がありました。
Bさん「higeさん、あれから私たち、めちゃくちゃです。新しい方は、今までのやり方を全て白紙にして、自分のやり方を押し付けてきます。どれも以前うまくいかなかったやり方です。お願いだから、戻って来てください」
私「新しい方も、しばらくすれば効率的なやり方に気づきますよ。それまで頑張って伝えるしかないですね…。私も新しいプロジェクトがあるし…」
Bさんは、肩を落として帰って行きました。そして、3ヶ月間、地獄のような日々が続いたそうです。私の後任者とBさんは結局うまくいかず、後任者が退職。ピンチヒッターとして、私は新プロジェクトとかけもちすることになったのです。
私「3ヶ月間、本当に大変でしたね。この惨状…」
Bさん「つらかったです…」
私「もしもですが、Bさんが管理業務についたら、この辛さって緩和されるんじゃないかなと思うのですが、やっぱりポリシーは変わりませんか?」
Bさん「今回の件は本当に懲りました。でも、それがやりたいっかって言われたらそうじゃないです。やりたいことは、本当にないんです。やりたくないことだらけです」
やりたいことを叶えることはチャンスが訪れればできるでしょう。でもやりたくないことを回避するのは、やりたいことを叶えるよりも難易度が高いと思います。Bさんは、ポリシーを持って派遣社員をしています。もし、効率的に仕事がしたいというのが1番の希望なら、それに伴う犠牲は受け入れるしかありません。それができなければ、だれかの指示に従い、指示者がかわるたびに、混乱の渦に飲み込まれる可能性が高いのです。
仕事を楽しく進めるために大切な3つのこと
私だってFIREを目指していますが、そのためには種銭が必要。労働力を費やして、お金を稼ぎ、せっせと投資するのみです。働くのは1日のうち8時間。1/3も労働に費やしています。(通勤している人はさらに多くの時間!!)
多くの時間を費やした労働を、辛く厳しい時間にするのか、面白がれる時間にするのかは自分次第。できれば、面白がれる時間で給与が高いと最高ですよね。私自身も昇進は目指していませんが、労働が少しでも心地いい時間にするために、職場環境を整える努力はしています。
私は、自分の仕事が楽しいし、給与も平均位はいただいていて、労働時間も短く、完全リモートワークで自由度も高い仕事についています。そしてどういう人が、そうなれるかも徐々にわかってきました。
「やりたいこと」は声に出して伝えよう
「やりたいこと」を心に秘めてはいけな叶えられるのは自分だけです。まずは、声に出して周りの人に伝えましょう。これ、本当に基本的なことですが、大抵の場合はできていません。事務員Bさんのように「やりたくないこと」を伝えてくる人は多いです。
でもそうすると、仕事上では「ちょっと面倒な人」にカテゴライズされて、ワクワクするけどちょっとリスクが高いなっていう仕事は絶対に降ってきません。
逆に「やりたいこと」を伝えているとどうでしょう。もし誰かがそのチャンスを知ったとき、あなたにそれを教えてくれるかもしれません。Aさんの時のように。
周りの人を大切にしよう
あなたがしっかりと働き、信頼人であると周囲の人に思われることは、大変重要です。それができなければ「ただ、やりたいことを言って、すべきことをしない適当な人」の烙印を押されかねないのです。
「やりたいこと」を言ってポジティブに捉えてもらう土壌づくりは、かなり重要です。しかしこれ、Bさんはできているからこそ、もったいないな〜って思うんですよね。
チャンスが巡ってきたときにものにできる準備をしよう
今回デザイナーAさんがチャンスを掴めたのは、半年以上前からやりたいことに対する準備を進めていたから。そして仕事上ではそのチャンスを得られない間も友人に無償でその技術を提供していました。そこで試行錯誤を繰り返して、スキルアップしていたので、私の上司は納得して彼女に新しい仕事を任せたのです。
もちろん結果が出て、デザイナーBさんはメインのUIデザイナーの地位を確立できそうなくらいまできています。
まとめ:どうせ労働するなら「やりたいこと」表明をして楽しくやろう
労働資本を投資に回し、しっかりとお金のなる木を育てること。でもその労働は辛く苦しいものでなくてもいいのです。長い時間を費やす労働をより楽しく、自分のスキルが上がる形で実行するには、まずやらせてくれる環境づくりが重要。
フラットな会社を見つけ、入社したら、チームメイトにやりたいことを話しまくる。
これを実行して、労働時間を自分にとって有意義なひとときに変えてみてはいかがでしょうか。
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