ファッション雑誌の編集者になる方法。元編集者が考えるメリットとデメリット

ファッション雑誌の編集者になる方法。元編集者が考えるメリットとデメリット

22歳から32歳までの10年間、ファッション雑誌&webマガジンの編集者をしてきました。今は全く別の仕事をしていますが、改めて凄まじい10年だったなと思います。

ファッション雑誌の編集者とは

笑う女性

ファッション雑誌の編集者は、ファッション雑誌を作る人です。ざっくりとしていますが、雑誌のひとつの企画を担当するのが編集者。それらを束ねるのが編集長。編集者は企画の総指揮者です。

ファッション雑誌の編集者の仕事内容

  • 企画を考える
  • 撮影を組み立てる
  • 撮影する
  • 原稿
  • デザイン
  • 印刷所へ

という全体の”監督”として、雑紙を作る人。最もメインの仕事は”企画を考える”ことで、情報を”集”め”編”むのが編集者の大事なやるべきことです。その規格に合わせて、撮影を組み立て、どんなカメラマン、モデル、メイク、ヘア、スタイリストにお願いすべきかをプランニング。依頼して、実際撮影します。その写真を持って原稿をライターに依頼し、デザイナーに紙面デザインを作ってもらいます。そのデータを持って、印刷所で本にしてもらうのが一連。

これを毎月やっています!

毎月!!!!

めちゃ大変なんです…。

どんな人がファッション雑誌の編集者に向いてる?

  • 芯が強い
  • メンタルが強い
  • 最後までやりきる力がある
  • 体力が尋常じゃない
  • センスがある
  • 文章が得意
  • 美人
  • スタイルがいい

この辺りの条件が揃うと、編集者として大成する人が多いように感じます。

とにかくこの業界、自我が強い人が多いです。主張しないと負けます。しかしそこは皆さん頭がいいので、言い方は柔らかく。しかし芯が強く絶対に自分のイメージを曲げません。それこそが、新しいトレンドを作り出したり、ムーブメントになるので、ひとつの才能と言えます。また、どんなに批判されても心がやまないだけのメンタルの強さも重要。周りに自我が強い人ばかりなので、心が弱いとすぐ病みます。

また、ハードワークなので体力はかなり重要。大事な撮影日に熱を出して欠席…なんてことはできませんから、いくら寝ていなくても30分の仮眠で元気いっぱいになれる人が向いています。

ファッション誌なので、センスは大事。ダサいと、仕事ができない人の烙印を押される異常な世界です。

文章が不得意な人は、編集者になるととても苦労します。漢字ができないなんて、もってのほか。文章を操る仕事ですから。

「美人」「スタイルがいい」は、ファッション誌特有で、編集者企画などでファッションスナップや美容ネタで誌面に出られるメリットがあり、モデルをキャスティングしなくても、コストをかけずいい感じのページができ、なおかつその人自身が「ファッションのプロ」「美容のプロ」としてネームバリューを上げることができます。

ファッション雑誌の編集者になるメリット&デメリット

キラキラビジューのハイヒール

ファッション雑誌の編集者は、昔は大人気の仕事でした。今は人気も下がっていますが、それでも求人数が少ないため倍率はすごいことになっています。

私もこの業界に入る前は、ファッション誌の編集者のイメージがぼんやりしていました。22歳から32歳まで10年間働いてみて個人的に感じたメリットとデメリットをまとめます。

メリット

サングラスをかけた女性

この業界に入って感じたメリットは、若いうちほど大きく感じました!

洋服が安く買える

ファッション業界には、販売の半年前に購入予約をする「オーダー」と撮影用のサンプル品を格安で購入できる「サンプルセール」があります。

オーダーは、事前注文することで2〜4割引きで安く購入できます。その代わりキャンセルはできません。半年前にトレンドや未来に着たい服を予想するのは難しく、よくタンスの肥やしを増やしていました。

サンプルセールは、撮影で使ったり、正規の製造ラインとは違うラインで作られている文字通りサンプル品で、6〜9割引で買えることが多かったです。9割引…。やばい…。安い!ってなって、買って後悔することの繰り返しでした。

化粧品はもらえる

新製品をいただけます。雑誌に新商品が載っていて、その使い心地が書いてあると思うのですが、それらは事前に編集部員が使ってみた感想が含まれています。ある意味人体実験です。

スキンケアはもちろん、メイクも。リップは発売する全色がいただけたりしますので、毎日1本消費してもなくならないくらいもらいます。

コスメのコストは高いので、若い女性にとっては大きなメリットだと思います。

ただでご飯やエステにいける

こちらも取材で、無料でいろんな体験ができます。プレスツアーと言って、取材旅行に行けるチャンスもあります。ある程度の経験を積めば、ですが。

基本朝は遅い

編集部は夜型。朝は遅めです。12時過ぎると編集部員が集まってくる…くらいの編集部もあります。

編集長が小さい子供のいるママだったりすると、編集部時代が朝方で19時には帰宅厳守なんてルールがあったりもします。要は編集長次第です。

勤務時間がゆるい

展示会や撮影などで外出しているスタッフが多いので、出勤に関しての諸々はゆるいです。ランチの時間も自由なので、時間があればゆったりランチすることも可能。締め切り後は、会社からタクシーに乗って美味しいランチを食べに言ってたこともあります。どちらも経費。優雅や。

服装は自由

ファッション誌は制服なんてありません。いつでもトレンド最先端のその雑誌を象徴する服装を求められます。

コンサバ雑誌なのにストリート系の格好というようなミスマッチはあまりみたことがありません。そういう意味では自由とは言えないのかもしれません。

デメリット

這いつくばる女性

メリットは多いのですが、その分デメリットもたっぷり。いろんなことを犠牲にして生きていかなければならない。その覚悟は必要です。

労働時間は長い

撮影は早朝から深夜まで。土日にしか撮影できないこともあり、労働時間はめちゃくちゃです。会社には仮眠室やシャワー室があったりして、泊まること前提だったりして…。

体力が必要

労働時間が長いのもそうですが、撮影用の小道具や洋服を運んだり、体力は最低限必要です。

キラキラしてない、ほぼ

おしゃれをしてパーティに行って、芸能人の撮影をして、パリコレのランウェイを取材…なんて瞬間が、ファッション誌のドラマのワンシーンには登場しますが、それは全体の5%ほど。95%の時間は、地味で辛い作業です。

このギャップに耐えられず、編集部のアルバイトはすぐ辞めていく…。

付き合いで洋服を買う

洋服は仕事の一部。付き合いのあるブランドの洋服を買わざるを得ない時もあります。こちらは大抵経費は出ませんので自腹です。

ダサい服を着ると仕事ができない人にされる

洋服の仕事ですから、ダサい服は着てはいけません。だったら全身黒づくめのユニクロでポリシーを語ったほうがマシ。

もしもダサい人だと認定されたら、仕事ができない人と思われて、花形の企画は回ってこないでしょう。恐ろしや。

不条理なことも多い

雑誌では編集長の言うことが絶対!どんなに不条理で非合理的なことで、編集長の言うことに従うしかありません。パワハラは、日常茶飯事だと思ったほうがいいでしょう。

出版社は成熟事業で、中年〜定年間近の高年齢層が多いのも特徴。ファッションのことがわらかないおじいさんが全ての決定権を持っていることも…。しかもそういうおじさまがた、普段はゴルフの練習ばかりで仕事してないのに高給取りだったりします。典型的な古き良き日本企業。それは反面、”そんな状態でも安泰”の裏返しでもあります。

仕事としての将来性

ファッション雑誌は、廃れゆく産業です。広告ビジネスでしたが、今はファッション広告はインフルエンサーをはじめとするwebへ移行。紙媒体は、予算削減の嵐です。そんな終わりゆく産業に今から新卒で入るには、自分なりの人生計画が必要だと思います。

ファッション雑誌の編集者になる方法

雑誌とペン

ファッション雑誌の編集者になるには大きく3つのルートがあります。

難易度・高:大手出版社の新卒採用を突破する

キャリアウーマン

出版社大手のファッション編集者は、今でも人気!数千〜数万の応募から、選ばれる新卒は数十人。その中から編集者になれるのは選ばれし数名です。ファッション編集者の王道ルートで

  • 給与が高い
  • 大企業で安定している
  • 福利厚生が手厚い
  • 終身雇用で安心

のため、定年まで勤め上げる人が多数。社内恋愛も多く、パワーカップルばかりです。

ただ、大手の場合、ファッション雑誌以外にもたくさんの本を出しているため、小説や漫画、週刊誌、もしくは全く関係ない事務や広告営業に配属される確率も高いです。ファッション雑誌の編集者になれるのは、ほんの一握りと言っても過言ではありません。さらに、編集者としての技量がないと判断されると、販売部や営業部、事務職に配属になり、ほぼ戻ることは不可能です。

高学歴で頭が良く、家柄もいい人が多いのが大きな特徴で、英語が喋れるのは当たり前。帰国子女やフランス語がペラペラなんて人も珍しくありません。ここへの就職を考えるなら、東大・京大・早稲田・慶應・上智など、有名大を卒業しておくのは、最低限しておくべきことかもしれません。

入社すると、そこからは人生勝ち組です。編集者になれば、残業がたっぷりあるので、初年度から1000万円近い年収をもらう人もいます。(その分働きまくりですが)また、福利厚生もしっかりしているので、社食無料や超低金利での住宅ローン貸付など、選ばれしものだからこその特権も与えられます。

ファッションが好きな人より、文学少女だった人が多いのも特徴。ファッション命というよりも、サラリーマン編集者の雰囲気が漂いますので、ファッション雑誌の編集者として「洋服しか愛せない!」というタイプにはあまり向かないかもしれません。その反面、アクが強い人は少なく、常識的でマナーにはうるさい人は多いので、タトゥーなんかをした日には、呼び出し…なんてこともあり得ます。

大手出版社のファッション部門は、収益的にはイマイチですが、漫画がドル箱なので問題なし。また、大手は全て都内一等地に不動産を持っています。神保町なんかは、よく見るとビルの名前に集英社ってよく書いてありますね。要は財閥なので、経営は盤石。数十年、マイナス利益でも全く問題ないだけのキャッシュを持っています。

どの会社も上場していないので、労働基準法はどこ吹く風。その代わり残業代はしっかり払われますし、タクシー代や食事代もノーチェックでどこまでも支払われます。経費最高。

▼代表的な出版社
集英社
小学館
講談社

▼特徴
優等生が多い
偏差値が高い
ファッション好きより文学少女

難易度・中:中小出版社の新卒採用を血眼で探す

女性

大手は狭き道です。大手一本の就活はリスクしかありませんので、中小出版社も検討すべきです。

  • 給与はばらつきがある
  • 経営は不安定であることが多い
  • 福利厚生は微妙
  • 中途入社・数年以内の退職が多い

大手出版社と違って、中小出版社は、給与も労働時間もピンキリです。よーく吟味して入社しないと大変なことになります。

中小出版社は即戦力を求めているため、新卒採用を実施しない年度も多くあります。運良く新卒採用が実施されてもそこはまたまた狭き門。しかし、こちらは学歴よりも一芸が評価されることがあります。大手よりも出版物が偏っていることが多いため、偏差値が高い大学よりも「1年間、バックパックで世界1周してました!」みたいな行動力が評価されることも。その出版社のカラーを読み取って、なんならそれに向けての行動を学生のうちからしておくのもあり。

無事、入社できたら、そこからも戦いです。先ほども述べたように、ここに集まる編集者たちはちょっと癖ありの人たちばかり。常識的な考えを否定されたり、白いものを「黒!」とすることもしばしば。

また、ファッション命で、その雑誌が大好きで入社する人も多いので、自分たちの美的センスに適さない人には、「ダサい」烙印を押してイコール仕事ができないと評価します。そして、みんなが嫌がる面倒臭い仕事をそういうダサい人に押し付けたり…。ここでは、配属された雑誌の程をなす最新ファッションを毎日身に纏い、鎧のように自分を守る必要性があるのです。

好きな仕事なので、ほとんどの人が仕事中毒。働きすぎて体調不良になることは少なくないです。1年間に2日しか休んでないという猛者にあったこともあります。そんな熾烈な環境なので、10年もすると体力の限界。「これからもずっとこの仕事を続けられるのだろうか…」とドロップアウトする人も多いのです。

▼代表的な出版社
マガジンハウス
宝島社
コンデナスト社
ハースト婦人画報社

▼特徴
カルチャー女子が多い
クセが強い
ファッション命!こだわりあり

難易度・低:アルバイトからフリーランス&中途採用

女性

大手・小中出版社、すべての新卒採用に落ちてしまっても、まだチャンスはあります。多くの出版社はいつも人手不足。アルバイト採用を行っています。そこから、社員orフリーエディターを目指す道です。

  • 給与は安い
  • 雇用は不安定
  • 福利厚生はほぼない
  • 社員になれる可能性は低い
  • お金がないのが惨め

アルバイトで入社しても、編集作業ができるとは限りません。まさに修羅の道。雑用をなんでもこなし、編集長に認められて初めて、巻末のプレゼントページの原稿を書かせてもらうところあたりから始めることができるかもしれません。

アルバイトのうちは、ものすごく給与が安いです。社員の中で働いていると、高価な洋服を身につけた正社員の横で、カップ麺を食べるアルバイト…。とても惨めかもしれません。それを乗り越えて、運良く社員試験に合格するというルートもなきにしもあらず。もしくは、そこで技術とコネクションを得て、フリーランスとして独立することを目指します。

この期間は、ほぼ休みなくずっと働き通しだと考えていいでしょう。仕事の沼です。

▼アルバイト採用&社員登用している出版社
集英社・小学館・講談社は望み薄(5年に1回の奇跡の1人とか…)
中小出版社は可能性あり

▼特徴
ガッツがある
素直
他人と比べない

まとめ:ファッション好きにはたまらない仕事だが、ハードでその道に入るのも難しい!

ロングヘアの女性

ファッション雑誌の編集者になるのは生半可ではありません。もしあなたがセンスが良くて、おしゃれで美女なら、インスタやYOUTUBEで自分のメディアを持つことのほうが将来性があるでしょう。

ただ、いまだにブランドとしてのファッション雑誌は利用価値があるかもしれません。「世界的有名ファッション誌の元編集者が作ったブランド」とか「元編集者がプロデュース」といった需要は少なからずあります。

10年間、ファッションの世界にどっぷりと使って、本当に楽しかった。労働環境は最悪だし、お金は貯まらないし。でも好きな芸能人に会えたり、絶対定価では買えない洋服を手に入れたり、取材旅行に行ったり!

ぶっ飛んだファッショニスタたちとの10年間は、本当にいい思い出だし、今でもいい友達です。

これからファッション雑誌の編集者を目指すなら、ぜひ自分の人生計画を立てて、ここでなにをなすべきかを明確にして、進んでください!

仕事・副業カテゴリの最新記事